「NAGACHIKA(前編)」

戦国武将が女子高生に転生!?でも中身はガチの武将⚔️
体育祭の騎馬戦が“ガチ合戦”になる――!
笑えて、熱くて、ちょっと泣ける転生コメディ・・・

【ペルソナ】
・金森知花(ちか/17歳/CV:坂田月菜)=高山市街地の高校2年生。レキジョで剣道部
・織田信乃(しの/17歳/CV:坂田月菜)=知花の親友。少しだけわがまま
・金森長近(ながちか/59歳=本能寺の変の時点での年齢/CV:日比野正裕)=知花と入れ替わる
・明智光宏(あけち先生/55歳=本能寺の変の光秀の年齢/CV:日比野正裕)=実は生徒思いの教師

【プロローグ:1582年/京都・二条御所「本能寺の変」】

◾️SE:襖を開く音

『なに!
明智光秀が謀反だと!?』

『信長様は自害?
まことか、まことの話か!』

『嫡男(ちゃくなん)の信忠(のぶただ)様は?
・・・逃れて、二条御所へ?』

『行くぞ!長則(ながのり)!
二条御所じゃ!
なんとしても信忠様をお守りせねば!』

◾️SE:燃え盛る炎の音

『遅かったか!
おのれ!光秀!
御所に火を放つとは!正気の沙汰か!』

『ええい!放せ!長則!
止めるでない!』

『信忠様〜!
この長近めがすぐに参りまするぞ〜っ!』

◾️SE:炎の轟音

【シーン1:2026年/高山市街地の高等学校】

◾️SE:学校のチャイム

「ハッ!
ど、どこじゃ?ここは!」

◾️SE:教室の扉を開ける音

「はーい、席についてー。
歴史の授業、始めるぞー」

「信忠!信忠様は!?」

「ちょっとぉ、知花。
大丈夫?
寝ぼけてんの?
明智先生、こっち見てるよ」

「明智!明智だと!?」

「しっ。だまって」

「じゃあ、先週の続きなー。
織田信長の天下取りまでやったから・・・」

「こやつ、上様を呼び捨てに!」

「だから、静かにして、って」(※ここ、小声で)

「う、うむ。わかった。
して、お主は?」(※ここも、小声で)

「もう〜、なに言ってんの。
信乃でしょ、シノ」(※ここ、小声で)

「シノどの。
すまぬ。
ときに、ここは、どこじゃ?」(※ここも、小声で)

「ま〜た、歴史のゲーム?
それ放課後にして」(※ここ、小声で)

これは、どういうことだ。
わしはつい先ほどまで二条御所にいたはず。
そうだ、
信忠様をお助せんと火の中へ・・・
だが、ここは?どこだ?

「ということで、教科書128ページ。
ここ試験に出るからなー。
比叡山延暦寺の焼き討ち。
1571年の衝撃的な事件だ」

「なに!?」

「もっと声落として」(※ここ、小声で)

「こ、心得た」(※ここ、小声で)

「信長は仏罰も恐れず、山を丸ごと焼き払った。
まあ、今で言う『サイコパス』だな」

「信乃どの、さいこぱすとは何ものじゃ?」(※ここ、小声で)

「和訳すると、ってこと?えっと・・
狂人、とか、人でなし、ってことかな」(※ここ、小声で)

「なんだと!(※椅子から立ち上がる)
この無礼者!」

「ちょ、知花!」(※小声で叫ぶ)

「ん?どうした?金森。
なんだまた の血が騒ぐのか?」

「明智どの、よいか。よく聞くがよい。
わしもあのとき軍勢にいたからな。
あのとき、延暦寺は武装した僧兵(そうへい)の集団だった。
上様は、
『味方にならなくとも良いが、せめて中立を守れ。
さもなくば山を焼き払う』
と何度も警告していたのじゃ。
それを無視し続けたのは延暦寺の方であろう」

「まあ、そんなことはわかっとる。
オレも歴史の教師だぞ。
じゃあ聞くがな、金森。
どうして信長は、僧だけでなく、
山にいた女子供まで切り捨てた?」

「う・・それは・・・」

わしとて、好き好んでそんな行為をするものか。
だが、あのとき、上様に逆らえる者などこの世にはいなかった。

「なんとか、女子供だけでも逃してやりたかった・・」(※苦悶の言い方)

「あ、それ、テレビで見た」

「しかもな、オレが許せんと思うのは、
信長がそれを家来にやらせた、ということだ。
自らは手をくださず、明智光秀と羽柴秀吉に命じた。
これを卑怯と言わずしてなんとする」

「う・・うう・・・」

返す言葉もない。
思い出さぬようにしておったのだが・・・

わが人生の”汚点”と言ってもいいのやもしれぬ。

この奇妙な世界で、明智という名を持つ者に
ここまでやり込められるとは・・・
無念なり。

【シーン2:2026年/高山城址】

◾️SE:高山城址の雑踏

「いいか、みんな。
せっかく社会見学に来たのだから、
なにかを学んで帰るんだぞ」

わしが、このあやかしの世界に来てから
はや一月(ひとつき)の月日が流れた。

いまごろ二条御所はどうなっておろうか・・
信忠様は?
長則は無事にお守りいたしておるのか・・
心配でたまらぬ・・

「知花、ま〜た、ぼ〜っとして。
高山城址(たかやまじょうし)だよ。
前から来たい、って言ってたじゃない」

「高山城址・・・?」

「珍しいねえ。
レキジョの知花が知らないなんて」

「高山城を築いたのは、みんなもよく知ってる金森長近だ」

「え・・・そうなのか」

「天正13年。1585年。
長近は、
三木自綱(みつき よりつな)を滅ぼして飛騨の領主となった」

「天正13年・・・だと。
本能寺よりわずか3年で・・」

「それを命じたのは、秀吉だ」

「ひ・・・秀吉どのが?
ということは、つまり・・・」

「その3年後に高山城の築城が始まり、完成までに16年を要している」

「では・・・なぜ、いまその城がないのか」

「ま、改易とかいろいろあって
高山城は、元禄8年に取り壊された、ということだ。
この城址(しろあと)を見て、何か感じるものはないか?」

「あはれなり」

いったい、なにがあったというのか。

わしは、苔むした城址を眺めながら、心に寒い風が吹くのを感じていた。

【シーン3:2026年/体育祭・騎馬戦】

◾️SE:騎馬戦の賑わい

「ぬかったぁ!
敵の術中にまんまとハマるとは!」

まさか、このあやかしの世界にも『合戦』があるとは思いもしなかった。
『体育祭』という戦の中の『騎馬戦』というものらしい。
しかも信乃どのの推薦により、我が軍、1組の大将はこのわし。
総大将は、明智殿である。

徹底的に策を練り、戦に臨む。

ふむ。敵の兜を奪えば、勝ち戦となるのだな。
首をとるということか。わかりやすい。

心得た。
なにより戦場での振る舞いは、わしに利があるはずじゃ。

◾️SE:ホイッスルの音

笛の音とともに戦は始まった。

しかし、敵の2組はひたすら猪突猛進。

これは・・・いかなる戦術か。

考え過ぎてつい油断したのが、失敗であった。

敵の突進をかわそうと転進を命じた際、馬は大きくよろめく。
いかん! このままでは馬が潰れ、わしの足が地についてしまう!

わしは咄嗟に、崩れゆく馬の背を己の体幹で支えた。
馬である信乃たちの肩に全ての荷重を預けて強引に体勢を戻す。

その瞬間。
わしの足首に、激痛が走った。

うっ・・・

落馬こそ免れたものの、これでは・・・
戦を指揮する大将が、初手(しょて)で負傷するとは・・
長近、一生の不覚なり!

「知花!大丈夫!?」

「なんの、これしき!
心配無用じゃ」

「金森、見せてみろ」

「大したことではない」

「うむ・・・そうか。
よし。
残念だが、棄権しよう」

「なんだと?」

「体育祭の本文は、戦いに”勝つ”ことではない」

「なに・・」

「生徒の体を守ること。決して傷つけないこと。
それが、総大将であるオレの仕事だ」

「うむ・・・
理(ことわり)だな。

そうか・・・
明智殿がわれらのこと、慮(おもんばか)る気持ちはよくわかった。

だが、貴殿も武士(もののふ)であれば理解できよう。
大将が敵に背を向けるなど、あってはならぬこと。

頼む。明智殿。

武士(ぶし)の情けだ。
わしの体はなにひとつ問題はないのだ」

「先生、あたしたちからもお願いします!
知花は剣道部のエースなんだし。
自分のことはよくわかってるはずです。
続けさせてください!」

十兵衛、いや、明智殿は、わしの目をしばし見つめたのち、口を開いた。

「わかった・・・そこまで言うなら・・・

だが、約束だ。

決して無理はしないこと。
もし、少しでも難しいと思ったら棄権するぞ」

「御意。
かたじけない、明智殿」

「知花、よかったね」

「ああ、恩にきるぞ」

「よ〜し、いくぞ!
川中島だぁ」

「ん?
信乃どの、いまなんと?」

「川中島の決戦でしょ。騎馬戦の代名詞じゃない」

「それだ!」

「えっ?」

「我らは武田信玄の戦法でいく!
いいか、こういうことだ。
大将の馬は最小限の動きにする。
周りに足の速い馬たちを配置。
鶴が翼を広げた形で控えるのだ」

「へえ〜」

「動かぬわしを見て、敵は突撃してくるであろう。
敵がわしの首を狙って近づいた瞬間。
左右の兵、つまり其の方(そのほう)らが、背後に回り込む。
気がついたときに奴らの兜はなくなっておる。

「首?兜?
ああ、帽子ね」

「最後に残った敵のとどめはわしが」

「とどめって(苦笑)」

わしの戦略を、明智殿は優しい顔で聞いていた。

ひょっとするとわしは今まで・・
明智殿のことを誤解しておったのかもしれぬ。

◾️SE:騎馬戦の音

結局・・・
敵の軍勢は我らの戦術によって、散り散りに崩れていく。

見事な勝ち戦(いくさ)であった。

目を閉じれば、ここにくるまでの三ヶ月前を思い出す。

直前の甲州征伐。武田軍との戦い。

次々と城を捨てて敗走していく武田軍。
最強の軍勢が滅びる様子を再び見ているようであった。

【シーン4:2026年/臥龍桜〜飛騨一宮水無神社】

◾️SE:野鳥のさえずり

「もう三月(みつき)か。
”光陰矢の如し”じゃな」

「なに言ってんの?知花」

「あいや・・
見事な大樹よのう。
まるで、天から降りた龍が臥しておるようじゃ」

「だから臥龍桜って言うんだよね」

「臥龍桜・・・よい言葉(ことのは)じゃ」

「せっかくだから、水無神社もいかない?」

「水無神社?」

「あたしたち、来年卒業じゃない。
あたしは、お家のリンゴ農園で働くんだけど、
知花は大学行くんでしょ。
だから、合格祈願」

「大学とは?」

「もう〜、まだ歴史ゲームに沼ってるのぉ。
大学は大学。最高学府でしょ」

「ほう、学舎(まなびや)・・足利学校のようなものか。
それはよい」

「さ、だから行くよ。水無神社へ」

◾️SE:神社の静かな雰囲気〜柏手を打つ音

「信忠様が無事であらせますように。
長則がお役目を果たせておるように・・・」

「知花、聞こえてるよ」

「信乃殿・・・」

「なあに?」

「本当に世話になったのう」

「やだ、もう・・・
わけわかんない、イミフだし」

「ん?
おお、信乃殿、見てくれ。
本殿の中の、あの灯篭」

「え・・」

「灯篭の中の炎が、だんだん大きくなっておらぬか?」

「炎?火?
そんなのどこにあるの?」

「ほら、あの左右の灯篭じゃ・・・」

「火なんてないじゃない」

「いや、確かに・・・
あ、いかん・・・
視界が・・天地が・・・まわっていく・・・・」

「ちょっと!知花!
どうしたの!しっかりして!」

遠のいていく意識の中で、信乃殿の顔もぼやけていった・・・

【シーン5:2026年/知花帰還/臥龍桜〜飛騨一宮水無神社】

◾️SE:野鳥のさえずり

「ハッ」

「よかった!知花、気がついた?」

「信乃!
こ、ここは?」

「なに言ってんの。水無神社じゃない。
あんた、立ったまま、ず〜っと固まってたのよ。目をつむったまま」

「じゃあ・・・戻ってきたのね!現代へ!
よかった!」

「ちょ、大丈夫?」

「いいの!
信忠も長則も無事だったんだから」

「ワケわかんない」

「あ・・・でもアタシ・・・歴史を変えちゃったかも・・」

「はいはい、どんどん変えてください」

「ねえ信乃、高山城は?
高山城って、どうなってる?」

「どうなってるもなにも、ただの城址じゃない」

「そっか・・・よかった・・」

「もういい加減、その歴史ゲームやめたら?」

ゲームならよかった。
でも、これは現実。

あとは・・まかせたよ、長近。

金森長近公!

NAGACHIKA 後編へ続く

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!