「おかえり〜旅のおわり」

路線バスの中で交差する、5つの人生、5つの想い。

旅の終わりに待っているのは、感動でも答えでもなく、ただ、迎えてくれる場所。

ぜひ、最後までゆっくりとお聴きください。

声で地域の記憶を紡ぐプロジェクト、ヒダテン!

【ペルソナ】
・月愛(かぐら/一之宮:32歳/CV:小椋美織)=東京で働くマーケター。実家は一之宮。父は神職
・咲良(さくら/荘川:21歳/CV:岩波あこ)=荘川のそば農家。大空と付き合って駆け落ち
・大空(りく/清見:22歳/CV:田中遼大)=清見の家具職人。平湯から高速バスで咲良と東京へ
・萌々(もも/国府:19歳/CV:高松志帆)=国府出身東京の女子大生。さるぼぼをお焚き上げ
・真言(まこと/高根:8歳/CV:山﨑るい)=高根の小学生。丹生川の祖母の元を訪ねる
・愛李彩(ありさ/にゅうかわ:65歳/CV:中島ゆかり)=丹生川の農園を営む。真言の祖母
・朱里(すばる/市街地:20歳/CV:米山伸伍)=市街地で看護師を目指す専門学校生。屋台組所属
・林檎(りんご/久々野:16歳/CV:坂田月菜)=蓬希の同級生。実家は久々野で観光農園を営む
・静流(しずる/奥飛騨:34歳/CV:日比野正裕)=奥飛騨で老舗旅館を経営する若者
・蓬希(よもぎ/朝日:16歳/CV:蓬坂えりか)=女子高生。漢方薬剤師になりたい

[濃飛バス路線/高山バスセンター〜新穂高ロープウェイ】
https://www.navitime.co.jp/bus/route/00054220/高山濃飛バスセンター-新穂高ロープウェイ[濃飛バス]

【コジュケイ/鳴き声】
https://youtu.be/GBlGy-jLUdE

[プロローグ〜アバンタイトル:ヒダテン!たちの登場】

■SE/高山市街地〜古い町並
■ヒダテン!10人の登場。物語の狂言回し

高山レッド!一之宮かぐら!奥飛騨シズル!国府もも!清見ロック!
久々野りんご!丹生川スクナ!荘川さくら!高根メイズ!朝日よもぎ!
ヒダテン!です

(※1.レッド、2.かぐら、3.シズル、4.もも、5.ロック)
1.今からお届けするのは、路線バスのなかにある5つの物語。
2.見終えたあとに、心が少〜しあったかくなれますように。
3.ほっとするひとときをお届けします。
4.みなさんもこんなプチ旅、してみませんか。
5.どうかごゆっくりご覧ください。

[プロローグ:はじまりの駅/高山駅】※ここだけはモノローグ

■SE/高山線車内放送「♪アルプスの牧場」〜高山駅のホーム〜駅の案内アナウンス
→モノローグはタイトルバック/アニメの背景は特急ひだの車窓

高山駅10時16分。
東京からのぞみの始発に乗っても、高山に着くのは最短でこの時間。

ふうっ。

私は月愛(かぐら)。
渋谷の広告代理店で働くマーケター。

東京の若者は高山を知らない。
その理由をリサーチしてほしい。

高山の観光協会からソリューションの依頼が入ったのは年の瀬。

冗談でしょ。

全国的に有名な観光地なのに。
アニメの聖地にもなってるし。

いてもたってもいられず、私は始発ののぞみに飛び乗った。
で、イマココ。

さて、どうする?

高山まで来たのはいいけど、どこへ行くか決めてない。
ふと、目の前を走る路線バスに目がいった。

[シーン1:路線バスその1/荘川・清見の乗客「咲良と大空」】

■SE/バスの車内・アイドリング

高山駅が始発のバス。
新穂高ロープウェイ行き。

発車まで10分か・・
私は後ろから2番目の席に座る。

そういえば、高校のときからこの場所、定番だったなあ。
どうでもいいことを思い出していた。

■SE/バスのステップを上がってくる音

バスの車内は、それほど混んでいない。
平日だから。

発車直前に乗り込んできたのは、若いカップル。
私と同じくらいの年かな。
ひとことも口を開かず、私の前の席に座った。

バスが動き出すのと同時に男性が口を開く。

「咲良・・後悔してないかい?」
「大空・・きっと大丈夫だよね」
「ああ。東京へ着いたら、前に清見にいた友だちのとこへ行く。
家具工房、紹介してくれるって」

え?
まさか駆け落ち・・・?

そのとき、彼女のポケットからなにかが落ちた。
ひらりと舞ったそれは・・手紙?
2人とも気づいていない。
躊躇いながら、私は声をかける。

「これ、落としましたよ」

「え?
あ・・ありがとうございます」
「なに?」
「封筒・・・」
「え・・」
「手紙と・・・なにか入ってる・・」
「なに?・・その黒い粒。
ちっちゃくて、三角形の・・」
「種・・・荘川そばの・・・」
「手紙は?」
「おかあさんから・・
”今年いちばんできのいい種よ、きっと咲くから”
って・・・」
「大丈夫?咲良・・泣いてるの?」
「ううん・・なんか・・・蕎麦がらの匂いが目に染みちゃって・・」
「ようし。オレ東京着いたら
工房で最初にプランター作るから!そこで育てよう」
「大空・・」

がんばって。
私は心の中で2人に声をかけた。

[シーン2:路線バスその2/国府・市街地の乗客「萌々と朱里」】

■SE/バスの走行音〜停車音〜扉が開く音

国分寺から乗ってきたのは若い女性。
女子大生っぽい。
ダークグレーのショートコートに・・中は黒いスーツ?
都会っぽいイメージ。
私の斜め前の席に腰をおろした。

と、すぐにその前の席の男性が振り向いて声をかける。

バスの中でナンパ?

「国分寺って珍しいな・・」
「え・・・」
「観光客でしょ?古い町並とか行かないの?」
「観光客じゃないから」

答えてるし。

「え?ひだっこ?そうは見えないな」
「帰省中」
「大学生のホリデーかぁ?羨ましい」
「葬式だけど。おばあちゃんの」
「え・・」
「国分寺でさるぼぼをお焚き上げしてきた帰り。
おばあちゃんが毎月送ってくれたから。
これでも羨ましい?」
「いや・・ご、ごめん」
「おばあちゃん、国府なんだけど、私の古いさるぼぼ、毎月お焚き上げしてたって」
「そうか・・」
「私、新しいさるぼぼ作ったから、一緒に奥飛騨の温泉へいくの。
おばあちゃん、いつも私と行きたがってたし」
「悪かったよ・・
実は、オレが向かってる病院にも仲良いばあちゃんがいてさ」
「病院?」
「ああ、こう見えてオレ、看護師の専門学校行ってんだ。病院は実習」
「へえ〜」
「そのばあちゃんも、さるぼぼくれるって言うんだよ。
自分はもういらないからって」
「そうなんだ」
「オレ、ERの認定看護師になりたいんだけど
その夢もさるぼぼが叶えてくれるって。
そりゃ盛りすぎだよな」
「かなうんじゃない?」
「え・・」
「ふふ・・」
「あ・・オ、オレ、朱里。君は?」
「さあ・・」

そう言ったあと、彼女は小さな声で「萌々」とつぶやいた。
彼に聞こえたかどうかわからない。
でも最初の軽薄さは消え、真摯な態度へ変わった彼は、前に向き直った。
バスは古い町並口を越えて、別院前へ。

[シーン3:路線バスその3/久々野・朝日の乗客「林檎と蓬希」】

■SE/バスの走行音〜停車音〜扉が開く音

別院前から乗ってきたのは、女子高生の2人。
懐かしいな、あの制服・・・

「よかったね、蓬希。八幡さま、行けて」
「うん、ありがとう、林檎」

そっか。
桜山八幡宮へ行ってきたんだ。
秋の高山祭、私また行けなかったな。

「さっき買ったお守り、交換しない?」
「え?なんで?」
「そうすれば、アタシたち、ずっと一緒にいられるじゃない」
「あ・・」
「これを蓬希だと思って・・」
「ね、林檎・・実はさ・・・私もう来週引っ越すんだ」
「え?」
「ごめん、だまってて」
「そんな・・」
「これ、よかったら持ってて」
「なに?」
「朝日の薬草で作ったお守り。
そのお守り袋の中に一緒に入れてくれる?」
「ズルい。自分だけ・・」
「ごめん」
「でも・・アタシも持ってきたんだ」
「え?なに?」
「はい・・」
「え・・・」
「リンゴの小枝を組み合わせた写真立てだよ」
「あ・・・」
「最後の日に渡そうと思ってたんだけど、持ってきててよかった」
「この写真・・・」
「そ、初めて2人でリンゴ狩りにいったとき」
「3年前だ」
「今日の写真を入れようと思ったのに」
「入れる!ぜったい入れるから」
「そうと決まれば、このあとは・・」
「ほおのき平でラストスキー!」
「薬学部、がんばってね。大変なんでしょ、勉強」
「うん。でも、これでがんばれる。
林檎も農園、がんばって」
「まかせといて。今よりもっと甘くて美味しいリンゴを作っちゃうから」
「そしたら、絶対食べに帰ってくるわ」
「そんときは、また2人で八幡さま行きましょ」
「うん!」
「約束よ!」
「約束!」

いいなあ。
アオハルって感じ。
私にもあったかな、あんな甘酸っぱい日々。
バスは丹生川町へ入っていった。

[シーン4:路線バスその4/丹生川・高根の乗客「愛李彩と真言」】

■SE/バスの車内走行音〜携帯電話の着信音

「あ、もしもし。おばあちゃん?」
「うん、乗ってるよ」

うとうとしていたら、スマホの着信音が鳴った。
あ、私じゃない。
うしろの席・・・
小学生くらいの男の子がひとりで座ってる。
電話で話している途中に、バスは旗鉾の停留所へ。
初老の女性が乗ってきて、男の子の横に座った。

「真言、えらいわぁ。ひとりでバスに乗れたのね」
「なに言ってるの、愛李彩ばあちゃん
ボクもう8歳だよ。
ひとりでおつかいだってできるんだから」
「うふふ、そうね。今日は新穂高のロープウェイ乗って、そのあとは温泉ね」
「ねえ、おばあちゃん、両面宿儺って知ってる?」
「もちろん」
「アニメとか教科書だとすっごい悪者なんだ」
「あらそう。でもね、教科書だけが真実とは限らないのよ」
「どういうこと?」
「おばあちゃんの住む丹生川には宿儺に関していろんな伝説が残ってるの」
「へえ〜、教えて」
「昔々、七つの災害が飛騨を襲ったとき、宿儺が食べ物を用意して民を救ったとか」
「マジ?」
「大和朝廷が飛騨へ攻めてきたときも民のために戦ったし」
「え?それで、どうなったの?」
「討たれちゃったわ」
「なんで?両面宿儺はものすごく強かったんでしょ」
「そうよ」
「じゃ、どうして討たれたの?」
「宿儺が勝っちゃったら、怒った大和朝廷が飛騨の国を滅ぼしちゃうでしょ」
「あ、そうか・・」
「そういうこと」
「学校じゃ先生も宿儺は飛騨の守り神だって言ってた」
「朝日小学校だっけ?」
「うん。スクールバスで通ってるよ」
「たいへんねえ。いっそ朝日に引っ越したら?」
「いやだ」
「どうして?」
「タカネコーンも野麦峠も木曽馬もだ〜い好きだから!」
「ふふ、さすが私の孫。
その気持ち、ずっと忘れないでね。宿儺のように」
「うん」

ああ、そうだった。
両面宿儺は大和朝廷に立ち向かった飛騨の英雄。
これ、大事なことだわ。
バスはほおのき平から平湯へ。
女子高生たちはほおのき平で降り、荘川のカップルは平湯で降りていった。

[シーン5:路線バスその5/奥飛騨・一之宮の乗客「静流と月愛」】

■SE/バスの車内走行音
■SE/バス案内放送「次は新穂高温泉、新穂高温泉。新穂高ロープウェイにおいでのお客様は終点までご乗車ください〜」
https://youtu.be/bivr7xJ tTa-zc

バスの案内放送は終点が近いことを告げる。
車内には私と最前列の席に座る男性がひとり。

そばに誰もいないことを確認して、私は小さく窓を開ける。
凍った空気が流れ込んできた。

つめたい・・・けど、気持ちいい・・・

暖房の音が大きくなる。  
私は慌てて窓を閉めた。

[シーン6:新穂高ロープウェイ鍋平高原駅/奥飛騨・一之宮の乗客「静流と月愛」】

■SE/冬の山鳥のさえずり(コジュケイなど)

「ああ〜っ。気持ちいい!」

「吹雪いてるけど(笑)」

思わず伸びをして深呼吸。

それを笑顔で見ている男性がいる。

「ちょっとこい」
「え?」
「ほら、あの鳴き声。ちょっとこい、ちょっとこい、って聴こえませんか?」
「はあ?」
「コジュケイです。冬の新穂高でよく聴かれますよ」

■SE/LINEの着信音

そのとき、メールの着信音が鳴った。

あ、父さん・・・
なんだろ・・

『誕生日おめでとう』

え?

「あ・・今日・・・私の誕生日・・
なんでよ、今年に限って・・・」

「無口な父さんらしい」
「メールの文章もひとことだけ?」

父は一之宮で神職に就いている。

「あ、そっか。厄年?」

思わず、笑った。
もう〜

あれ?
なに?

笑いながら涙がほおを伝う。

「いいもんでしょ、路線バスの旅も」
「え?」
「バスの車窓から見える景色って、とってもあったかいんです」
「吹雪の中で言うせりふ?」
「そこに足湯もありますよ」
「知ってるわ」
「観光客、じゃないんですね」
「ええ。もともと高山市民ですから」
「そうですか・・これからどこへ?」
「一之宮」
「え?」
「実家に帰って、父とつもる話、しようかしら」
「そりゃいい」
「地酒、買って帰ろうかな。臥龍桜」
「今度よければうちの温泉にもいらしてください」
「どこですか?」
「ロープウェイ降りたところ」
「ああ」

なんだか、わかったような気がする。
全然難しいことじゃない。

若者は高山を知らない。

じゃあ、教えてあげればいいんだ。

こんなにあったかくて、
こんなに美しくて、
こんなに心が癒される場所だって。

伝える方法?

え?
私、プロのマーケターよ。
ここじゃ言えないわ。

さあ、東京や大阪の若者たち。
私の声をきいて。

これが、高山よ!
もっと、みんなに高山を!

[エピローグ〜ヒダテン!たちの登場】

■SE/高山市街地〜古い町並
■ヒダテン!10人の登場。物語の狂言回し

(1.スクナ、2.さくら、3.メイズ、4.よもぎ、5.りんご)
1.うむ。よきかな。
2.この動画を観てくれたみなさま。
3.ボクたちに会いに来て。
4.まずは「ヒダテン」で検索。カタカナよ。
5.きっと心が震える感動が待ってるよ!

(※10人全員で)
おかえり!高山へ!

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