「ももがかぐらに・・(後編)」

声が入れ替わったら、夢が叶ってしまった・・・

声優本人の“声”が入れ替わる奇跡の物語。

でも本当に欲しかったのは、その声じゃなかったのかもしれない・・・

[プロローグ:2026年正月】※新年特番より切り抜き

■SE/番組タイトル〜HitsMeUp放送より切り抜き(以下音声)
https://hidaten.com/wp-content/uploads/2026/01/kagura-momo_hitsmeup.mp3

ヒダテン!の国府ももです。
一之宮かぐらです。私のイメージはどんな感じでしょうか?
イメージ? お声を聴いてからは、本当にももちゃんにぴったり。
もうなんか私もこんな可愛い声出したい!
嬉しいです。ありがとうございます。
どうしよう、私何言われる?
いやいやいや、私本当にお声が好きで。
芯があるけど柔らかいみたいなお声。
本当にそれこそかぐらにもぴったりだなって思ったし、
私はそういう声してないので、逆にないものねだりじゃないんですけど、
なんかすごく素敵なきれいなお声だなって思って。
もう個人的にめっちゃ好きなトーンなんですよ。
えー、そうなんですか? 嬉しい ありがとうございます。
ちょっと一日だけ声の交換みたいなのしたいですね。
できることならしたいです。
できることなら。

【シーン1-2:JR高山駅〜JR飛騨一ノ宮駅〜飛騨一宮水無神社】

◾️SE:高山駅の雑踏〜飛騨一ノ宮駅の構内〜飛騨一宮水無神社の静寂

月愛:「きちゃったね」

萌々:「きちゃった」

2人:「高山〜!!弾丸日帰り旅行!」

月愛:「からの飛騨一ノ宮駅」

萌々:「からの飛騨一宮水無神社〜!」

お正月の特番から1か月後。
私と月愛は、水無神社の拝殿前に立っていた。

私・萌々と月愛は声優。
飛騨高山を代表する擬人化キャラクターたちに命を吹き込んでいる。

私が演じるのは、飛騨桃の妖精、”国府もも”。
極上のスイーツのようなヒロインボイスで、みんな胸キュンよ。

月愛が演じるのは、舞姫キャラ、”一之宮かぐら”。
月愛の中低音域がクールビューティなキャラに重なっていく。
ハスキーだけど凛とした声、かっこいいよね。

実は私たちは、特番の収録が初顔合わせ。
なのに、なぜかお互いの声に惹かれてしまった。
自分にないものを欲しがる子どものように。

かぐらの声に憧れるももと、ももの声に焦がれるかぐら。

飛騨の一之宮、聖域で
なんという不条理なお願い。
祭神の御歳大神(みとしのおおかみ)さま、ごめんなさい!

だけど、表現の幅をもっと増やしたい。
外画の吹き替えも、スパイアクションも演じてみたい。

そんな思いに突き動かされるように、私たちは水無神社の鳥居をくぐった。
拝殿前に並んで立つ国府ももと一之宮かぐら。

月愛が短い祓詞(はらえことば)を唱える。
さすが舞姫。

二拝二拍手一拝。

月愛のような
”クールで凛としたハスキーボイス”。
私にもほしい!

月愛: 萌々が持っている、
”鈴の音のような透明感ある声”。
それを私にも!

月愛: 「お祈りした?」

萌々: 「した」

月愛: 「なんか、私たちって、すごいこと祈願してない?」

萌々: 「だよねー、こんなことお願いするひと、いないよねー」

月愛: 「でも朝起きたら、お互いの声が出せるようになってたりして」

萌々: 「ないない。
そんなんあったら、アタシ、オーディション受けまくるわ〜」

月愛: 「確かに。
あ、明日、アニメのアフレコじゃなかった?」

萌々: 「そうそう。
スパイアニメのCVオーディションよ。
まだ役は決まってないみたいだけど」

月愛: 「あの話題の?」

萌々: 「まあねー。
でも、スパイアクションなんて、私の声でいいのかなあ?」

月愛: 「いいんじゃない。
萌々みたいな声のアサシンとか、ギャップ萌えで」

萌々: 「そうかなあ。
月愛も明日アフレコの仕事でしょ?」

月愛: 「ボイスドラマよ。
ラブストーリーって言ってたけど、今回はモブだって」

萌々: 「え〜、月愛がモブなんて、超もったいない起用〜」

月愛: 「なことないってば。
ま、とにかくお互いがんばろ」

萌々: 「うん、ファイティン!」

国の天然記念物という臥龍桜の前で写真を撮る。
そのあと私たちは、高山線で高山へ。
駅前でお土産屋さんを覗きながら、帰りの特急ひだに乗り込んだ。

【シーン2-2:萌々の朝/目覚めたらクールビューティー】

◾️SE:目覚まし時計のアラーム音

萌々:「やっば〜いっ・・・今日オーディションなのに〜
あたたたた!腰うったし・・・・」

「って、あれ?」

「だれ?・・・アタシ〜?」

待て待て待て待て。
のど・・やられたか?

いや、そんなことはない。
昨夜だって、高山から帰って、加湿器つけて、
白湯飲んで、うがいして、マスクして寝たし。

「ああああああああ」

うん。別に喉は痛めてない。

じゃあ、なんで?
ってかこの声、ひょっとして・・・
まさか・・・

萌々:「一之宮かぐら〜!?」

鏡、鏡、鏡。
大丈夫。萌々だ。今日も可愛いし。
・・・なこと言ってる場合じゃない。
え?じゃあ・・・
アタシと月愛・・・

萌々:「声だけ入れ替わってる〜!?」(※ここは2人で)

これって・・
昨日の願い事が叶えられたってこと〜!?
んな、なろうサイトじゃあるまいし・・

いや、待った。
こんなこと言ってる場合じゃない。
今日はオーディションなんだから。
しかも時間やばいし。

とにかく急ご!

【シーン3-2:月愛のアフレコ現場/モブからの大抜擢】

◾️SE:スタジオのガヤ/萌々は高い声を出そうと何度も発声練習する

萌々:「あーあーあー」

だめだ。どこまでいってもクールビューティ・・

でも待てよ。
今日のオーディションは、スパイアクションアニメだったし・・

とにかく、配役だけでも見てから考えよ。

やがて配られた役を見てアタシは愕然とする。

西側の小国・マカロン公国の王女さま〜!?

やっぱり・・・
暗い顔して黙り込んだアタシに構成作家兼監督が声をかける。

監督:「あれ〜?
萌々ちゃんどうしたの?鬱な顔して。
ばっちりハマリ役でしょう?」

萌々:「あのう・・監督・・」

監督:「え?その声・・
まさか。こっちを狙ってた?」

萌々: そう言って監督が見せてくれたのは、主役のペルソナ。
王女様を守る、クールビューティな女スパイだ。

萌々:「いえいえいえ・・そんな・・めっそうもない」

監督:「あ、ちょっとお・・
もう役作りしてんじゃん。
ようし、じゃ、チャレンジしてみよっか」

萌々: 結局。
並いるベテラン勢をさしおいて、アタシが主役の座を射止めた。
いいんだろうか。これで・・・

【シーン4-2:ヒダテン!のアフレコ現場/2人の現場(萌々)】

萌々:「Eバイクが気持ちいい季節、ももと一緒にピーチロードを走らない?」

萌々: だめだ。
誰がどう聴いてもももじゃない。
やっぱ相談しようっと。

◾️SE:LINEの着信音

萌々: 私から月愛にLINEしようと思ったのに、
先にチャットをもらっちゃった。

◾️SE:LINEを開く音

ほらね。やっぱり、私たち・・

萌々:「声だけ入れ替わってる〜!!」(※ここは2人で)

なんて、どこかのアニメみたいなことは言ってる場合じゃないわ。
明日はヒダテン!アニメepisode-1の収録。
アタシが国府もも役、月愛が一之宮かぐら役でアフレコする。

もう、どうしよう?

そうだ、月愛に相談しよ。
月愛って、すっごいしっかり者だから。

◾️SE:スタジオのガヤ

萌々:「おはようございます〜」(※ここは2人で)

アタシたちは2人で待ち合わせて、スタジオへ入った。
かなり大きめのマスクをして。

私はなるべく萌々にくっついて声を出す。
まるで腹話術のように。

萌々:「あのう・・・Dにお願いがあるんですけど〜」

監督:「なに?」

萌々:「今日はあっち向いて喋ってもいいですか〜?」

監督:「あっちって?背中向いて話すってこと?」

萌々:「はい。しっかり役作りしたいので〜」

月愛:「自分の世界へ入りたいんです」

監督:「ふうん」

萌々:「オペレータさんにはマイク位置、お願いしました」

月愛:「モニターの位置も向こう側に変えてもらってます」

萌々:「ももとかぐらのシーンだけ先に録らせてもらうことにしました」

監督:「ま、いいけど。
なんで今日は2人、そんなにくっついてんの?」

月愛:「え?」(※ここは2人で)

萌々:「もうやだなあ、D〜。
アタシたちめっちゃ仲いいんですよぉ」

月愛:「特番ですっかりうちとけちゃって」

萌々:「Dのおかげです」

月愛:「ありがとうございました」

監督:「いや〜。僕なんもしてないし」

萌々: Dがなんも考えない性格でよかった。
収録はいっつもCVの自主性にまかせるって、細かいこと言わないし。
ってことで、Dやオペレータに背中を向けたアフレコ収録が始まった。

萌々:「臥龍の桜が舞う季節、わらわの舞も見せようぞ!」

月愛:「Eバイクが気持ちいい季節、ももと一緒にピーチロードを走らない?」

【シーン5-2:彼氏からのメール(萌々)】

◾️SE:メールの着信音

月愛: その夜、遠距恋愛中のショウタからメールが届いた。

『国府には今度いつ帰れそう?』

そうだ。
この前せっかく高山へ行ったのに、弾丸で戻ってきちゃったんだ。
だけど、この声じゃショウタに会えない。

『ショウタ、ごめん。
喉の調子がおかしくって。
良くなったらすぐに帰るよ。
ショウタの顔、早く見たい」

『そっか。無理しないでがんばってね』

ああ、やっぱり・・アタシ・・自分の声がいい。

何が大切で、何を優先すべきか。
アタシは一晩じっくり考えて、決心した。

【シーン6-2:飛騨一宮水無神社(萌々)】

◾️SE:飛騨一ノ宮駅を発車していく高山線〜冬の野鳥の鳴き声

月愛: 「あ・・」

萌々: 「あ・・」

月愛: 「萌々も来たんだ・・」

萌々: 「うん・・
きっと同じ特急ひだに乗ってたのね」

月愛: 「じゃあ目的も・・」

萌々: 「もちろん・・月愛と同じ」

月愛: 「そっか・・じゃ、いきましょ」

萌々: 「ええ・・水無神社へ」

月愛: 「御歳大神のもとへ」

萌々: アタシは月愛と一緒に、雪の飛騨一宮水無神社へ。
このまま月愛の声のままでもかまわない。
でもとにかく、ただもう一度お祈りしよう。

生まれ持った素敵な声があるのに
月愛の声までほしがった結果、こうなったこと。
御歳大神さまに素直に謝りたい。
本当にごめんなさい。

結果は翌朝すぐだった。
こうよ。

萌々: 「早くまた飛騨高山へ帰りたい!
ショウタの住む、飛騨国府へ!
ショウタ!
待っててね!
ショウタも高山も国府も、み〜んな愛してる!」

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