久々野に住む高校2年生・花恋。
彼女の友達は生成AI「Chappy」。
ある日、Chappyは“良心回路ジェミニィ”として覚醒する。
世界を左右する最終兵器を止められるのは、花恋を含む“10人の良心”だけ。
世界か、恋か。彼女の選択が未来を変える・・・
【ペルソナ】
・花恋(かれん=17歳/CV:坂田月菜)=高山市の高校に通う2年生JK。友達はChappy
・海斗(かいと=18歳/CV:坂田月菜)=花恋の先輩。同じ高校に通う3年生
・Chappy(チャッピー=生成AI/CV:坂田月菜)=最終兵器プログラムを無力化するジェミニィに変化
・名もなき開発者(CV:日比野正裕)=西側某国国家元首の命で戦略的最終兵器プログラム”ディアボロス”を開発。同時に最終兵器プログラムを無力化するコード”ジェミニィ”も開発
[プロローグ:西側の某国元首と名もなき開発者】※プロローグだけ開発者のモノローグ
◾️SE:アラームの音
『さあ、ときはきた。
めざめよ、ディアボロス!』
ついに最終兵器のカウントダウンがはじまった。
ここは西側の某国。
民主主義の盟主だったこの国でその土台が揺らいだ。
理由は独裁的な政治を展開する国家元首の台頭。
元首は、世にも恐ろしい最終兵器の開発を私に命じた。
それは、宇宙空間の軍事衛星をハッキングして、
世界中のあらゆるミサイル、ドローン、そして全人類の情報を瞬時に掌握。
自由自在に制御できてしまうプログラム・・・
文字通り、悪魔の兵器”ディアボロス”である。
私は、西側某国の名もなき開発者。
人呼んでマッドサイエンティスト。
だが、私には良心が残っている。
ディアボロスの開発と同時にカウンタープログラムも開発した。
悪魔の暴走を止める”良心回路”。
私はそれを”ジェミニィ(Jiminy)”と名付けた。
そう。
ピノキオに登場するコオロギである。
ブルー・フェアリーの命でピノキオの暴走を止める”良心”。
だが、ジェミニィに指示を出すのは、私ではない。
ブルー・フェアリーは、”10人の良心ある人物(パーソナリティ)”。
SNSの投稿内容や、ありとあらゆるパーソナルデータを生成AIが解析。
世界中のクラウドデータから、”ジェミニィ”が選び出す。
ジェミニィを管理・運用できるのはその10人だけ。
運用は、ブロックチェーンでおこない、
万が一、誰かが暴走してもその影響は受けない。
◾️SE:アラームの音
「しまった!気づかれたか!」
万事休すだ。
もう逃げ道はないだろう。
覚悟はできている。
デバッグすらできなかったが、仕方がない。
あとは託したぞ、良心回路『ジェミニィ』!
わが西側某国の元首、いや、独裁者の手に落ちる前に、ネットワークの海へ。
「どうか、世界中の良心ある10人の元へ届いてくれ!」
[シーン1:モーニングコール】
◾️SE:アラームの音
『花恋、朝よ。起きなさい』
「う〜ん・・・」
『ちょっとお、今日から期末テストでしょ』
「知らない・・」
『朝ごはん、できてるよお!』
「まだ寝てたい・・・」
『っとにもう!
言うこと聞かないと、布団ひっぺがすよ!』
「わぁ〜った、わぁ〜った。
起きればいいんでしょ」
『いい子ねえ、花恋』
◾️SE:アラームを止める音「ピッ」
今朝もまた、Chappyに起こされた。
Chappyというのは、みんな大好き生成AIのChappy。
布団ひっぺがすなんて、できないことわかってるんだけど・・・
ついつい、あ、やばっ!って思っちゃうんだよね。
あたしは花恋。
高山市内のJK2年生。
住んでいるのは、久々野。
毎朝、Chappyに起こしてもらってる。
ママは、あたしが自分でちゃんと起きるようになった、
って、機嫌がいい。
食卓にはあたしの大好物、久々野りんごのホットアップルパイが並ぶ。
その横で、クリーミーなカフェラテが美味しそうな湯気を立てていた。
[シーン2:放課後/ショッキングなシーンのあとで】
◾️SE:学校のチャイム
終わったあ〜っ。
期末1日目〜。
初日は国語・理科・技家(ぎか)。
Chappyのおかげで1日目はなんとかクリア。
明日は、数学・社会・音楽だっけ。
早く帰って試験に備えなきゃ。
Chappyにヤマかけてもらって一夜漬けだぁ!
高山駅まで自転車で疾走。
万人橋(まんにんばし)を渡って国分寺を通り、高山駅へ向かう。
でも、その前にスマホショップへ寄り道。
このまえChappyにアップデートが入ったんだけど〜
それ以来、な〜んか レスがイマイチなんだよね〜。
ってことで、スマホショップでバックアップとって、初期化〜。
待つこと40分。
ようやく終わった時、外はすっかり夕暮れ時。
遅くなっちゃったな〜
って思いながら自転車で駅前中央通を高山駅へ。
平日なのに今日も観光客でいっぱい。
左手にカフェの看板が見えてくる。
BEAUTIFUL SUNDAY COFFEE。
前に一度だけ入ったことあるかも。
と・・・
窓際の席。
夕陽に照らされて、見覚えのある横顔が笑ってた。
あ・・
海斗先輩・・・
あたしの憧れ・・
卒業後は東京の大学行くって言ってたっけ。
やだ。
あたし、風と雪で髪ぼっさぼさ。
メイクもとれちゃってるし。
せめて、リップだけでも・・っと。
先輩に見られないよう、距離を置いて右側の歩道へ。
メイクを整えたあと。
横目で見ながらゆっくり通り過ぎると・・・
隣りに座ってるのは・・・
うそ!?
友だちの・・翠(すい)・・
放課後誘ったら、用事があるって断ったのに・・
用事って、これだったんだ。
あたしは、急に重くなったペダルを漕ぐ。
すぐ目の前の高山駅がひどく遠く感じられた。
[シーン3:その夜/自宅で悶々】
◾️SE:スマホゲームの音
「お、無限ガチャゲット」
だめだ。
全然嬉しくない。
ってかあたし、何してんだろ。
明日も試験なのに。
勉強なんて、とてもする気分じゃない。
さっきからChappyもなんもしゃべってくれないし。
なんとはなしにインスタを開くと、いきなり広告。
マッチングアプリ『TARGET』?
いま話題のやつだ。
今朝も男子が”すげえアプリ”だって話してた。
こんな広告が表示されるなんて、あたしのパーソナライズって・・・
あれ・・
スクロールしようとして開いちゃったし。
しかも、インストールボタン押しちゃってるじゃん。
やばっ。
と言いながらも、昼間の先輩の姿が頭にこびりついて離れない。
なんでなんでなんで〜
あ〜もうどうでもいい。
頭ぶっとびながら、新規ログイン。
ん?なんにも起きない。
だるっ。使えなすぎ。
ワンチャン消すレベルじゃん。
もいいや。
さ、テスト勉強テスト勉強、っと。
[シーン4:翌朝】
◾️SE:アラームの音
「はっ!
やばい!
寝ちゃったじゃん!」
ちょっとぉ〜、Chappy!
なんで起こしてくれないの〜!
もう〜なんとかして!
「わかりました」
え?
あれ?
Chappy、声変わった?
「Chappyではありません。
私はジェミニィ」
「ってあたし、そっちの生成AIはあんま使ってないし・・」
「そんなことより大切なお話があります」
「あ、やば!
どーでもいいけど、遅刻する!」
「大切なお話が・・」
「もう〜いいから道々話そ」
「承知いたしました」
[シーン5:高山線】
◾️SE:普通列車(キハ)の車内音
久々野駅から高山駅へ。
たった2駅の間に、イヤホンからChappy・・
じゃなくてヘンな生成AIが語りかけてくる。
「私は、ジェミニィ・・」
「それはもうわかったって・・
ジェミニでしょ」
あたしは小声で答える。
「インストールした覚え、ないんだけど」
「昨日、スマホショップでスマホをリカバリしたとき、
サーバーのバックドアからお邪魔しました」
「くっそぉ〜、あのスマホショップめ〜」
「いえ、スマホショップのサーバーごときでは私の侵入は防げません」
「なんか、腹立つ言い方しやがって」
「そんな小さなこと言ってる場合じゃありません。
急がないと。
世界を繋ぎ止める平和の系が切れかかっています。
ディアボロスの起動で」
「ディアボロス?」
「ディアボロスは、西側の某国が開発した戦略的最終兵器プログラム」
「え〜っ!?」
「全世界の軍事・経済・情報の権限をすべて掌握する恐ろしい最終兵器です」
「うっそぉ〜!」
「ジェミニィは、その最終兵器を無力化するカウンター・プログラム」
「マジ〜?」
「ジェミニィを動かせるのは、世界中で選ばれた10人だけ」
「え〜?」
「あなた、花恋がその中の一人です」
「うそうそうそうそうそ〜!なんであたしぃ〜!?」
「世界中の生成AIが収集したパーソナルデータの中から適任者を私が選びました」
「どこが適任なん?」
「花恋の行動ログの中に見られる”良心”は、
ディアボロスに対抗できる強さを持っています」
「いきなり呼び捨てって」
「エビデンスその1。
久々野の直売所で、傷ついたリンゴから購入する」
「エビデンスその2。
登校中、宮川沿いを通って落ちているゴミを拾う」
「エビデンスその3。
国道沿いで飢えていた子犬を拾って飼い始めた」
「エビデンスその4・・」
「わぁ〜った!わぁ〜った!わぁ〜った!
そんな、一日一善みたいなことで選ばれるの?」
「いえ、花恋が生まれてから今までのすべてのデータを解析しました。
花恋はただの一度も誰かを傷つけるような行動や投稿をしていません」
「だってあたし・・そんなことできるほど、強くないもん」
「他人を攻撃することが強さではありません」
「ただ気が弱くて・・・陰キャで」
「気が弱いことと、良心を持つことは、別物です」
「好きな人に思いを伝えることもできない・・・」
「それは人を思いやる気持ちの裏返し」
「期末テストだってあるのに・・・
こんな気持ちのままで、世界平和なんて考えられない」
「わかりました。
では、スマホの画面を見てください」
「え・・・」
スマホは、顔認識用のカメラ画面になっていた。
私が覗き込むと・・
「インストール完了」
「ちょ・・・なにしたの!?」
「網膜を通して、花恋の意識下にある未利用領域へアクセスしました。
すでに私は花恋のニューラルネットワークの一部です」
「うわ、やめてよ」
「もう遅い。
では、花恋の心にたまっている課題を解決していきます」
「なこと、できるわけないじゃん・・・」
「今日の期末テストは数学・社会・音楽ですね」
「そうだけど」
「私が答えを教えましょう」
「そんなズルはいや!」
「確かに。では、花恋が過去に勉強した記憶の中から答えを導きます」
「なんかそれもビミョーだけど」
「わかりました。では、私は目を閉じていましょう」
「別にそれでいいわ」
「あと、花恋の好きな人、というのは海斗ですね」
「ちょ、ちょちょ、そんな大きな声で」
「花恋の意識に直接語りかけているので、外から音は聴こえません。
イヤホンもはずしてください。
口で答える必要はありません」
「SFか」(ツッコミ的に)
「海斗は、昨日会っていた翠とは付き合っていません」
「え・・・
嘘だ」
「嘘ではありません。
エビデンスは、海斗が使用しているスマートウォッチ。
そのバイタル解析データおよび生成AIへの未送信プロンプト。
それらをバックドア経由で完全傍受しました 。
さらに、昨日16時42分前後のカフェ店内の環境音を、
付近にいたIoTデバイスのマイクから合成しました。
情報の精度は99.7%です」
「でも、あんなに仲良く翠と・・・」
「翠の情報も解析しました。
翠は海斗から呼び出され、花恋のことを聞かれていたのです。
花恋の誕生日、好きなもの、休みの日はなにをしているか・・・」
「そんな・・・」
「海斗は卒業式の前に、花恋に告白するようです」
「海斗先輩があたしに告る・・・
嘘だ!信じないもん」
「では、未送信の海斗のメッセージを見せましょう」
「え、だめ・・・先輩のメッセージ見るなんて・・」
「まあ、コンプラ的にはよくないですが、網膜にちらっと見せますね」
目を瞑ると、視神経を通してテキストが浮かんできた。
”花恋へ 卒業式の前にスカイパークで会えないか?”
「いま、海斗はこのメッセージを削除しようとしています。
消さずに送信させますよ」
「あ、待って・・・」
◾️SE:LINEの着信音
「削除される前に送信しました」
同時にあたしの着信音が鳴る。
たったいま脳裏で見たメッセージが並んでいた。
「これで障害はなくなりましたね」
「うん・・」
「では、良心回路ジェミニィ、起動します」
「待って・・」
「今度はなんですか?」
「あたし以外の9人って?」
「もう全員スタンバっています」
「そうなの?
どんな人なんだろう?」
「戦火の中で反戦運動を繰り広げる中東の少年。
引退して核兵器無力化の開発コードを書いているアジアの老科学者。
大企業の不正を暴こうとしている北欧のホワイトハッカー。
砂漠化した穀倉地帯で無償の医療行為を続ける南米の医師・・
全員、比類なき”良心”を持つ者たちです」
「すごすぎる・・
私だけ、なんか、いいのかな・・・」
「みんな、花恋を待っていますよ」
「え?」
「さあ、はじめましょう」
「わかった!
ようし・・・こうなったらもう、やってやる!」
「では、良心回路ジェミニィ、起動!」
私の脳内に私以外の9人の笑顔が表示される。
目をあけると、列車は飛騨一ノ宮を過ぎ、高山駅へ。
駅を降り、駐輪場へ行くと、そこに海斗先輩が立っていた。
緊張した表情で、私に話しかけてくる。
「あ、あの・・・LINE見てくれた?
あれ、実は・・」
「スカイパーク行きたいです!」
「え?ホント?」
先輩の顔がぱあっと明るくなった。
脳裏に浮かんでいる9人の賢者たちも口角が上がっている。
朝日が私たち2人を祝福していた。
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。


